王妃の資格 15

      (完璧な答えだわ・・・)
      フィアはアンジェローズに感心した。
      「フィア姫、次はあなたの番です」
      
      「王妃として、私にできる最高を尽くしたいと思っております」
      フィアは答えた。
      
      しばらく時間が流れた。
      
      「では、なぜ質素なドレスに、イミテーションの宝石達を選んだのかと、王が尋ねておられます」
      
      「それは・・・」
      
      その場にいた皆が、疑問に思っていたことだった。
      
      「わたくしには、これで十分だと思ったのです。わたくしがもし、后になるなら、ドレス
      を着るよりも、普通の服を着て、民と一緒に行動し、笑いあいたい。
      王を支え、民が笑顔でくらせるよう、努力したい。だから、自分のものは必要最小限にして、
      浮いたお金を、ほかにもっと大切な事につかって欲しいのです」
       
      その場にいたものすべてが、フィアを見ているかのように思えた。

      
      「では、次に」
      

      「今、他に思う者はいるかと、王は聞いておられる」
      
      「順番に答えよ」
      
      姫君たちは、次々おりますと、答えていく。
      
      「わたくしは、おりません」
      きっぱりと、アンジェローズは答えた。
      
      (彼女が選ばれるかもしれない。)
      フィアはそう思った。
      
      「次に、フィア姫」
      
      しばらく、沈黙してフィアは答えた
      「わたくしには、思う人が確かにおります」
      一言、一言を、慎重にのべて行く。
      「ですが、わたくしはあなたさまのものになりたいと、望んでおります」
      
      「・・・では、その者への想いはどうする、ときいておられる」
      
      一瞬、言葉をなくすフィア。
      
      皆が、その続きを待っている。
      
      「私は・・・・その想いを解き放ち、あなた様だけを、愛し通してみせます」
      無機質でいて決意のこもった声。

      しばらくの間、沈黙が部屋を支配した。
      
      (王はきっと、私を選ばない。)
      他に想う人がいると、言ってしまった。
      (お父様、ごめんなさい、フィアは無力です。)
      フィアは、選ばれる自信がなかった。
      
      カツン カツン
      
      ゆっくりとした足音が聞こえる。
      
      足音はフィアの前で止まる。
      
      「顔を上げよ」
      威厳に満ちた、それでいて不思議にやさしさを含んだ声。
      「え・・・」
      フィアの身体は、一瞬で固まった。