王妃の資格 12
「いくのか?」
「ええ」
馬車を降りて、城の中へと歩き出そうとするフィア。
が、腕をフィオスに取られてしまう。
「愛してる。今も、これからも」
「・・・私は、もうあなたの事を愛せない。愛さない。どうか私のことは、忘れてください」
背を向け、フィアはフィオスを見ようとしない。
「君が愛しているのは、俺だ」
ズキン。心が痛む。
「あなたが言ったのよ、私は王妃になれると」
何も言わないで。フィアの頼りなげな背中がそう告げていた。
「・・・君を、祝福する。フィア」
つかまれた腕がほどかれた。
「ありがとう」
振り返り、フィアは涙を流しながら一生懸命笑ってみせた。
「さよなら・・。あなたに出逢えて、わたくしは幸せでした」
にじむ笑顔。
その場にいた誰もが、フィアに魅了されたかのようだった。
フィオスは黙って、一度も振り返ろうとしない、決意に満ちて歩くフィアを見つめた。
フィアは、他の姫君たちがいる所へ通された。
しばらくすると、この城の者と思える若者が入って来た。
「王はまだ、しばらくお見えにならない」
運びこまれる色とりどりのもの。
高価なものから、質素なものまで、色々と取り揃えてある。
「この中から、王妃にふさわしいと思うものを選ぶように」
今まで見たことのない高価な品も混ざっているのを見て、姫たちの顔色が変わる。
「それでは、しばらくお待ちを・・・」
姫君たちはおしゃべりをしはじめた。
フィアは何もいわず、ドレスを選びはじめる。
「ねえ、知っていて?デントフォール王はかなりお年をおとりだって。」
「髪が白くなっているかもしれないわ」
「私、いやよ、そんな人の后になるなんて」
「私も。でも、デントフオールはこの世界で一番の大国よ。
何一つ不自由しない生活に、王妃の地位、素敵だわ」
「私は無理やりお父様の命令でつれてこられたわ」
「私、わざと試験におちるわ。いくら地位があっても、不自由しなくても、老人の相手は
ぜったいいやよ」
そうだわ、と姫君たちはうなづく。
「そうそう、フィオス様、教えてくださったわ、最後の試験で、好きな人がいるといえば、
試験にはおちるって」
言葉に熱がこもる。
「そうね、私たちそうしましょう?」
「それなら、今は、好きなドレスを選んでもいいはずですわ」
せっせと姫君たちも自分の好みの服を選び始めた。