王妃の資格 9

      フィアの胸の下までを水が包んでいた。
      うつむきフィアは肩まで水につかり、胸を手で隠した。
      腕はまだフィオスにとらわれていた。
      「私・・・・」
      同時に、フィオスにひっぱられ、抱きしめられた。
      (え・・・・)
      そう、フィアは確かに、フィオスの腕の中にいた。
      
      月明かりに照らされ、二人は見つめあいながら、時が止まったかのように動かない。
      
      「ありがとう・・・、助かったわ」
      「君は危なっかしくて見てられない」
      攻める口調だが、それでいてやさしい響。
      
      言い終わると同時にフィアはまた、唇を奪われた。
      強く。それでいてやさしく。
      「だ・・・め、フィ・・・・」
      あらがおうとするフィア。
      何かが口の中に入って来る。
      奥へと逃げるフィア。だが、フィオスはフィアを捕まえ、どんどんと奥に入って行く。
      (だめ。私は・・・)
      理性とは反対に、フィアはだんだんとフィオスに答えていた。
      (これが、ディープキスなのかしら?)
      そんなのんきなことを考える自分に腹が立ってくる。
      ゆっくりと唇が離される。
      「はじめてだったのか?」
      目を開くフィア。
      見えたのは、フィオスのやさしく、熱のこもった瞳だった。
       
      「私、もう、后になれないわ」
      どうしていいのかわからないフィア。
      「なんだ、そんなにもよかったのか?」
      完全にからかわれている。
      「あなたとキスしてしまったわ。私・・・」
      思わずうつむくフィア。
      「デントフォール王に、合わせる顔がない、か?」
      フィアはこくんとうなずいた。
      「俺のものになればいい」
      フィオスは自信満々の笑みを浮かべた。
      「え?」
      
      「君を愛してる」
      フィオスはフィアの額にキスをした。