王妃の資格 7


 
     (やだ、わたしったら)
     ちゃんと話せていたのに。
     じっとフィオスに見つめられ、フィアは平静ではいられなかった。
     「もうそろそろ、今日泊まる宿屋に着く」
     「よかったわ
おなかがぺこぺこなの」
     フィオスを見ないでフィアは窓から景色を見た。
     時は黄昏。
     「きれい・・・・」
     自然の雄大さには何度も感動してしまう。
     「君の方がきれいだな」
     (え・・・)
     紫の瞳とエメラルド色の瞳、お互いをじっと見つめあう。
     
     「ありがとう」
     やわらかく微笑むフィア。
     否定をするでもなく、肯定するでもなく、フィアは笑った。
     
     馬車が止まった。どうやら宿屋に到着したようだ。
     
     
     馬車を降りようとすると、フィオスが手をさしだした。
     一瞬戸惑ったが、フィオスの手をとるフィア。
     お互い見つめあい、思いあっているかのようなまなざし。
     それは、まるで映画のようなワンシーンだった。
     
     フィアは、薄い金色の髪に、エメラルド色の瞳。
     対するフィオスは、黒の髪に、紫水晶の瞳。
     
     やわらかで上品なフィアに対し、自信に満ち、気品のあるフィオス。
     
     何もかもが、正反対の二人だった。
 
     でも、とても絵に描いたように似合っていて・・・
     
     もちろん、当人たちはそんな事、わかるはずもなく。
      
     (いけない、私は・・・)
     沸き起こる感情に、フィアは戸惑っていた。