王妃の資格 6

      「よかったわ、親切なあなたの部下の方がいてくれて」
      彼女はほっとしたようだ。
      「安心してくれていい。ちゃんとあの老人を火葬する。墓も立てる予定だ」
      「・・・この国には彼女のような人が多いのでしょうね」
      「そうだな」
      「許せないわ、民を何だと思っているの」
      静かだが、怒りのこもった声。
      「心配するな。いずれ、王が統一する」
      「本当に?」
      フィアは瞳を輝かせる。
      
      「姫君、君にとっての民とは?」
      じっと試すかのような目線と声。
      「同じ人間よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
      「理想論だな」
      「・・・そうかもしれないわね」
      
      「あなたはきっと違う考えのはずなのはわかってる」
      「・・・・・。」
      
      ガラガラと馬車はゆれる。
      「一つ、聞いてもいい?」
      「どうぞ、フィア姫」
      「あなたは、本当に私の案内係というだけなの?」
      何も答えないフィオス。
      「あなたはまるでデントフォール王を知っているみたいだし。
      それに」
      「それに?」
      「いえ、何でもないわ」
      とても気品がある。人の上にたつものの威厳も。
      そう言おうとしたが、フィアはやめた。
 
      「確かに、俺は、ただの案内係じゃない」
      フィオスはフィアに微笑みかけた。
      「俺は、デントフォール王をよく知る者だ」
      フィアはそうなの?という顔をした。
      「王のことならなんでも知っている」
      「そう」
      「王について何か聞きたいことはないのですか、姫?」
      にっと笑ってみせる。フィアをからかっているようだ。
      「そうね・・・」
      「王の女性の好みなどは聞きたくありませんか?今のあなたには必要でしょう?」
      ふう、とフィアはため息をついた。
      「それはいいわ、そういうのは好きじゃない」
      フィオスは笑みを浮かべている。
      「・・そうね、王は民から支持されていると聞いたわ。
      王は本当はお優しい方なのかしら?」
      「王に優しくして欲しいのですか?」
      フィオスは心の底からこの会話を楽しんでいるようだった。
      あきれたという表情のフィア。
      「そうね、優しくされたいのかもしれないわね?」
      また、ため息が漏れる。
      これで満足?つぶやくフィア。
      くっとフィオスは笑うのをこらえた。
      「君はそういう女じゃない」
      真剣な、情熱を帯びた紫の瞳が光っていた。