王妃の資格 5

      老人の所に戻ると、彼女はフィアに自分に出来るだけの笑顔を見せた。
     フィアはたまらなくなり、彼女のそばにかけよる。
     老人は立つこともなく寝そべっていた。
     フィアは彼女の頭をそっと持ち上げ、話しかけた。
     老人からは死へと向かう者のけっしていい香りでない香りがした。
     「あなたはとてもきれいよ、今日、あなたに出会ってよかったわ」
     やさしく、精霊に話すがごとくフィアは語りかける。
     老人はあー、あー、と小さな声にならない声で何かを伝えようとする。
     「あなたの名前を聞きたいわ」
     老人は涙を流した
     「私たち、もうお友達ね」
     フィアは震えながらも静かに微笑んだ。
     「あ・・・・い・・・あ・・・・・」
     言葉は途絶え、ゆっくりと、彼女の目が合わさった。
     老人は永遠の眠りについた。
     フィアは一瞬、悲しそうな表情を見せた。
     そして。
     フィアは静かに、そっと老人の額にキスをした。
     「あなたはとてもがんばって生きたわ、どうかいい夢を」
     やさしく微笑みながら、涙が彼女の頬をつたった。
     
     その場にいた誰もが言葉を失っていた。
     
     その時の彼女は、彼女の微笑みは、確かに美しかった。
     
     そして、フィオスは、彼女をその深みのある瞳でずっと見つめていた。
     
     
     
     その日から、下々の者がフィアに対する態度は変わった。
     
     フィアは自然に、赴くままに、対応した。