王妃の資格
<フィオス編16>


     
      「では、次に」
      

      「今、他に思う者はいるかと、王は聞いておられる」
      
      「順番に答えよ」
      
      姫君たちは、次々おりますと、答えていく。
      
      「アンジェローズ姫、あなたの番です」
      若者は王の言葉を伝えて行く。

      「わたくしは、おりません」
      きっぱりと、アンジェローズは答えた。

      
      「次に、フィア姫」
      
      (さあ、どう答えるかな、フィア姫?)
      いると言えば、試験には合格しないと伝えてある。
      それでも、正直にいると言えるかどうか。
      しばらく、沈黙してフィアは答えた
      「わたくしには、思う人が確かにおります」
      一言、一言を、慎重にのべて行く。
      「ですが、わたくしはあなたさまのものになりたいと、望んでおります」
      
      フッとフィオスは笑った。
      (正直に言えたな)
      「その者への想いをどうするのか聞いてくれ」

      「・・・では、その者への想いはどうする、ときいておられる」
      
      一瞬、言葉をなくすフィア。
      
      (難しい質問だ。どうする、フィア?)
      それでも私を愛すると言うのか。そういう私でも受け入れて欲しいというのか。
      (だが、君はそういう女ではない)
      フィオスは、フィアを信じていた。
      
      「私は・・・・その想いを解き放ち、あなた様だけを、愛し通してみせます」
      無機質でいて決意のこもった声。
    
      もっと、りっぱな意見もあっただろう。
      だが、フィアは自分の気持ちを素直に伝えた。
      
      (苦しんだだろうな)
      それは、すべて自分が彼女を試しに試したからだ。
      (そろそろ、彼女を解放しなくてはな)
      カツン カツン
      フィオスは歩き出し、フィアの前で止まる。
      気持ちがいくらかたかぶっている。

      「顔を上げよ」
      声にやさしさが伴う。
      「え・・・」
      フィアの身体は、一瞬で固まった。
      (私だと、わかったようだな)