王妃の資格
<フィオス編15>

  

      「王が今から参られる。皆、控えよ」
      大きな声が室内に響いた。

      フィオスは正装を着て、王座にゆっくりとついた。
      
      王のかわりに言葉を伝える青年は、はじめのあいさつを軽くのべると、
      本題に入っていった。
      
      「もしも、私の后になったならば、どういう后になりたいか、一人ずつ答えていただきたい」
      フィオスが言うと次に青年が大きな声で続く。
      
      「もしも、王の后になったならば、どういう后になりたいか、一人ずつ答えていただきたい」
      
      

       姫君たちは、予想もしなかった質問にうろたえる。
      わかりません、考えておりませんでした、と、同じような言葉が飛び交う。
     
      そんな中。
      「わたくしは、王の、そして民の理想の王妃になるよう、勤めますわ」
      自信に満ちた声で、アンジェローズは答えた。
    
      (アンジェローズ王女らしい意見だな。)
      彼女も、いい王妃になれるだろう。
      民を統率し、理想へと導く。
      そんな光景が想像できる。
      (だが。)
      「次の姫君の意見が聞きたい」
      「は」
      青年は頭を下げると、また大きな声で王の言葉を告げる。
      「フィア姫、次はあなたの番です。」
      
      「王妃として、私にできる最高を尽くしたいと思っております」
      (お前らしい意見だな。)
      フィオスはフィアを見た。
      (あれは、私が用意したイミテーションだな。)
      他の姫君は、揃って本物の宝石に高価なドレスを着ている。
      (ドレスも、質素だな。)
      見ただけでは、たいていの者は高価かはわからない。
      値段があまりしないが、フィアのセンスはよかった。
      ちゃんと彼女と調和し、美しく見える。
      控えめな王妃と言った所か。
      
      「なぜ、質素なドレスにイミテーションの宝石を選んだか、聞いてくれ」
      「は」
      青年は大きな声を出して言葉を告げる。
      「では、なぜ質素なドレスに、イミテーションの宝石達を選んだのかと、王が尋ねておられます。」
      「それは・・・」
      
      その場にいた皆が、疑問に思っていたことだった。
      
      「わたくしには、これで十分だと思ったのです。わたくしがもし、后になるなら、ドレス
      を着るよりも、普通の服を着て、民と一緒に行動し、笑いあいたい。
      王を支え、民が笑顔でくらせるよう、努力したい。だから、自分のものは必要最小限にして、
      浮いたお金を、ほかにもっと大切な事につかって欲しいのです」
      (お前らしいな、フィア。)
      フィオスは笑みを浮かべた。