王妃の資格
<フィオス編11>
「私は・・・」
戸惑いを隠せないフィア。
「そろそろ、あがろう」
次の瞬間、フィアはフィオスに抱えられ、すうっと水から離れた。
「や、やめて、私は大丈夫だから」
「大丈夫だ、お前は見ない」
フィアを抱え、まっすぐ前を見て歩くフィオス。
フィオスはまた、フィアをからかいたくなった。
「まあ・・そうだな、もう少し大人の女性になれよ?」
「!!」
な・・・な・・・!声にならない声。
「王はしっかりとした、大人の女性が好みだからな」
ちょっとしたからかいのつもりだった。
フィアは急に大人しくなった。
「ん?どうした?」
「あなたの口から、その言葉は聞きたくなかったわ」
フィアはフィオスを見ないでつぶやいた。
「私は、あなたを・・・」
「愛してる、か?」
それはわかっていた。たぶん、出逢った時から、フィアはフィオスに惹かれていたはずだ。
それについて、フィオスは何も言わなかった。
フィアは戸惑い、口にしてしまった事を後悔しているようだった。
フィオスは、どれ程自分がフィアを情熱的に見てるかをわかって、困惑する。
色々経験してきたが、彼女といると、色々なはじめてにであう。
(まいったな・・・・重症か?)
「でも、私は、あなたのものになれない」
まっすぐとフィオスを見つめるフィア。
その意味を理解し、フィオスはフィアを見る。
「君はいい后になるだろう」
「さっきは王の好みじゃないと言ったのに?」
(もう・・・限界だな。)
「王は君を選ぶだろう」
「え・・・・?」
事情が飲み込めないフィア。
「でもまだ、試験を受けてないわ」
「試験は、もう終わりだ」
「ますますわからないわ、フィオス?」
「俺が、試験の担当だからな」
「わざと、選んでくれなくてもいいわ」
そうじゃない、という顔をするフィオス。
「どうして、試験を受ける姫を一人ずつ呼んだかわかるか?」
「あ・・・」
フィアもわかったようだ。
「私で最後のはず・・・」
「王は姫君達の本当の姿を見たかった。」
「普段の、本当の私達を見極めようと、デントフォール王は、
私達をお試しになったのね?」
「まあ、そういうことだな」
うーん、と頷くフィア。
「わかるわ、私ももし王だったならそういうことをするかもしれない」
真剣な表情をするフィアをフィオスは笑った。
いつでも真っ先に人の立場になって行動し、理解しようとするフィア。
フィオスは素直に、そんなフィアを愛おしいと思った。
「そろそろ、着替えろよ?風引くぞ」
フィアをおろし、後ろを向くフィオス。
「も、もうちょっと離れて欲しいの、フィオス」
「冷たいな、命の恩人にその態度か?」
「もう、フィオス!?」
ハハハ、とフィオスは笑った。
やさしい時間が二人を包んでいた。