王妃の資格
<フィオス編10>

    フィアは、清らかだった。
    まだ、幼い印象のある顔に、すらっとしたライン。決して豊満ではないが、
    ちゃんとした女性の身体だった。
    肌は透き通るように白く、唇は小さくきれいな桜色だった。
    水につかったせいもあり、普段よりも大人に見える。
    月の光に照らされ、映るフィアは、幼さと大人っぽさ、両方を持ち合わせた女性に見えた。
    
    ハッとフィアは自分が何も着ていない事を思い出したようだ。
    水の中に肩までつかり、両手で胸を隠し、上を向こうとしない。
    「私・・・」
   
    同時に、フィオスにひっぱられ、抱きしめられた。
    
    そう、フィアは確かに、フィオスの腕の中にいた。
      
    月明かりに照らされ、二人は見つめあいながら、時が止まったかのように動かない。
      
    「ありがとう・・・、助かったわ」
    「君は危なっかしくて見てられない」
     
    次の瞬間。

    フィオスはまた、フィアの唇を奪った。
    まるで、フィアの存在を確かめるように。
    強く、激しく。
    「だ・・・め、フィ・・・・」
    みずと甘い味がする。
    フィアのなかに入り、彼女が拒むのを許さない。
    最初は、戸惑い逃げるフィアだったが、だんだんと答えてくれた。
    それを確認し、唇を離すフィオス。
    「はじめてだったのか?」
    フィアはなにも答えなかったが、そうだとフィオスは確信した。
    「私、もう、后になれないわ」
    どうしていいのかわからないフィア。
    「なんだ、そんなにもよかったのか?」
    そうだと言えば、フィオスは興味をなくしただろう。
    だが、フィアになら、褒められてもうれしい自分がいるのに気づく。
    「あなたとキスしてしまったわ。私・・・」
    思わずうつむくフィア。
    「デントフォール王に、合わせる顔がない、か?」
    フィアはこくんとうなずいた。
    「俺のものになればいい」
    フィオスは自信満々の笑みを浮かべた。
    「え?」
      
    「君を愛してる」
    フィオスはフィアの額にキスをした。
    その言葉は彼の本当の気持ちだった。
    (すまないが、私はそれでもお前を試す。)
    試して試して、お前を選ぶ。
    彼は心の中でそっとささやいた。