王妃の資格
<フィオス編9>

        食事が終わると、フィアは少し外に出たいとフィオスに相談した。
       「近くに川や湖はあるかしら?」
       「あるが、君を一人で行かせるわけにはいかない」
       え、とついつい困った表情をするフィア。
       「い、いいの、大丈夫よ、一人で行けるわ」
       フィアの顔がだんだん赤くなって行く。
       「なんだ、体を洗いたいのか?」
       「!」
       どうやらそのとおりのようだ。
       ますます顔が赤くなるフィア。
       「やだ、からかわないで!・・・本当にそうなんだけど」
       ぶっと思わずふきだすフィオス。
       「あっはははは!」
       思い切り笑うフィオスに、うろたえるフィア。
     
       やさしい空気が、二人を包んでいた。
       

       「俺は此処にいるから、何かあったら呼んでくれ」
       「ええ、わかったわ」
       答える声が弱弱しい。
       (緊張しているな。)
       フィアはどうやら湖の中に入ったらしい。
       「きれい・・」
       かすかに聞こえる声。
       だが、次の瞬間、水音が大きくなる。
       フィオスはフィアの方を向く。
       「フィォ・・・・!」
       かすかに聞こえるフィアの声にならない声。
       何も考えず、フィアの沈みかけた腕と身体を掴む。
       「大丈夫か!?」
       フィオスはこんなにもうろたえる事は一度もなかった。
       その彼が、今はフィアだけを真剣に見ている。
       (相当水をのんだな。)
       フィオスは、フィアの口を割り、フィアのなかにはいっていく。
       しばらくたって唇は離された。
       「まだ、苦しいか?」
       冷静を保とうとするフィオス。
       「おまえを・・・・・」
       まだ視界が定まらないフィア。
       「いや、何でもない」
       失うのかと思った。
       そう思ったが、口に出したくなかった。
       「キ・・・ス?」
       フィアは思わずつぶやく。