王妃の資格
<フィオス編7>
ガラガラと馬車はゆれる。
「一つ、聞いてもいい?」
「どうぞ、フィア姫」
「あなたは、本当に私の案内係というだけなの?」
(鋭いな)
「あなたはまるでデントフォール王を知っているみたいだし。
それに」
「それに?」
「いえ、何でもないわ」
(今は、まだ自分がデントフォール王だとは言えない。)
「確かに、俺は、ただの案内係じゃない」
フィオスはフィアに微笑みかけた。
「俺は、デントフォール王をよく知る者だ」
そうなの?という表情をするフィア。
(まだ、そういうところが子供だな。)
「王のことならなんでも知っている」
「そう」
「王について何か聞きたいことはないのですか、姫?」
彼女に向けて試すかのように笑うフィオス。
「そうね・・・」
「王の女性の好みなどは聞きたくありませんか?今のあなたには必要でしょう?」
彼女が怒った姿を見たかったフィオスだが、フィアはため息をついただけだった。
「それはいいわ、そういうのは好きじゃない」
彼女のこういう無欲なところを、フィオスは気に入っているようだ。
「・・そうね、王は民から支持されていると聞いたわ。
王は本当はお優しい方なのかしら?」
「王に優しくして欲しいのですか?」
フィアをからかうようにフィオスは言う。
あきれたという表情のフィア。
「そうね、優しくされたいのかもしれないわね?」
また、ため息が漏れる。
これで満足?つぶやくフィア。
くっとフィオスは笑うのをこらえた。
「君はそういう女じゃない」
フィオスはジッとフィアを見つめた。
彼女との時間は心地よく暖かかい。
(こんな気持ちははじめてだな。)
フィオスは、エメラルドの瞳をしたフィアに触れたい衝動に駆られた。