王妃の資格
<フィオス編6>


      「よかったわ、親切なあなたの部下の方がいてくれて」
      彼女はほっとしたようだ。
      「安心してくれていい。ちゃんとあの老人を火葬する。墓も立てる予定だ」
      「・・・この国には彼女のような人が多いのでしょうね」
      「そうだな」
      「許せないわ、民を何だと思っているの」
      静かだが、強い意志のある声。
      「心配するな。いずれ、王が統一する」
      (虐げられている、この国の民のためにも。)
      「本当に?」
      フィアは瞳を輝かせる。
      フィオスは彼女の笑顔にとらわれる。
      「姫君、君にとっての民とは?」
      「同じ人間よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
      「理想論だな」
      そう言いながらも、フィアらしい意見だと、フィオスは思った。
      「・・・そうかもしれないわね」
      「あなたはきっと違う考えのはずなのはわかってる。」
      「・・・・・」
      確かに、フィオスの考え方は、フィアと違っていた。
      王につくものとして、フィオスはいつも冷静に、客観的に物事を見る事が多い。
      フィアが老女の事を考えていた間、フィオスはどうやって今通過している国を
      治めるかを考えていた。それが虐げられている民に出来る最高の事だからだ。
      (だが、そうだな、フィア姫が私の王妃になるなら、いい王妃になるだろうな。)
      そして、それを望んでいる自分がいる。
      (私は、彼女に恋をしているかもしれない。)
      だが、と、フィオスは思う。
      (彼女が真の王妃に足る器かどうか、きちんと見極める。)
      不思議とフィオスは、彼女なら、どんな試練にも受け入れ、立ち向かい、
      克服するのだろうと、思えていた。