王妃の資格
<フィオス編2>

        ガラガラ。
       馬車は動き出す。
       フィオスはジッとフィア姫を見つめる。
       (まだ、幼いな。)
       フィオスは思った。
       確かにフィア姫は、美しかった。
       静かで控えめな物腰、薄い金の髪に透き通るようなエメラルドの瞳。
       フィア姫は、こちらに気づいたようだ。
       フィオスと瞳が合う。
       フィア姫は時間が止まったかのように、動かない。
       「お待ちしておりました、フィア姫」
       「はじめまして。フィアと申します」
       フィアは緊張が解けたようだ。
       「よろしければ名前を伺いたいのですが」
       「案内役のフィオスと申します」
       「フィオス様ですね」
       「どうぞフィオスと読んでください。」
       (さあ、試させて頂こうか、フィア姫?)
       そう、フィオスが案内係になってまで、ここにいるのには訳があった。
       彼は、自分の后になる女性を、自分で見極めたかったのだ。
       その為、偽りの身分で此処にいる。
       自分の后になる、その人を見つけるために。
       
       「失礼ながら、いくつか質問したいのですが、よろしいでしょうか?」
       「よかった、わたくしもあなたに聞きたいことが沢山ありますの」
       「何でも聞いてください。王宮に着くまでは私がフィア様の案内役を勤めさせて
       頂く事になっております」
       「そうですの。よかったわ、」
       ホッとするフィア姫。
       「わたくし、あなたの主人であるデントフォール王のこと、あまりくわしく
       知っておりませんの。よければ色々と教えてくださらないかしら?」
       フィオスは予想した通りの問いに答える。
       「そうですね、王は気難しい人ですよ」
       「ええ。そうみたいですね」
       「では、王がもうかなり年をとっていることもご存知ですね?」
       「わたくしのお父様と同じくらいだと聞きましたが」
       「では、あなたはそれを承知で王妃になる試験を受けに?」
       低く探るような声。
       「ええ、そうですね」
       (ほう・・それを承知で来たのか)
       今までの姫君はそれを聞くとそれはもう、いやそうにしていたのに、フィア姫は
       そうでもないようだ。
       「今ならまだ間に合います、ちゃんと好きな男性の所に嫁いでください」
       (さあ、どうするかな?)
       「え・・・・」
       意味がわからないフィア姫。
       「富と名誉がそんなに欲しいのですか?」
       フィオスは試すかのような目線でフィアを見つめた。