王妃の資格
<とある日の午後>
「あなたには負けたわ、フィア」
「え?」
フィアとアンジェローズは、王宮の庭園にいた。
アンジェローズは今日、ここを去り、ユージルド王国へ帰る事になっている。
「わたくし、選ばれる自信は十分にありましたのよ?」
「ああ、でもそれはあなのせいじゃないわ。あなたは立派だった。
わたし、あなたが選ばれるのだろうと、思ってたわ」
紅茶をいただきながら、フィアは微笑む。
「まあ、そうね、実力は同じくらいだったわね」
うんうんと頷くアンジェローズ。
「ま、デントフオール王の王妃になる資格は、あなたにあったということなのでしょうね」
「そんなこと、ないわ。ただ、フィオスは私を選んでくれたというだけで」
「謙遜しなくてもいいわ。でも、そうね。この試験ではあなたに負けたけれど、
次はあなたには負けなくてよ?フィア」
ズケズケと思ったことを口にするアンジェローズ。
そんな彼女をフィアは好ましく思っていた。
「あなたらしい意見ね、アンジェローズ」
二人は笑い合った。
二人は、おしゃべりを楽しみ、別れを惜しんだ。
フィアは、いつかユージルド王国に遊びに行く事を、アンジェローズと約束した。